第69話「私のこと?」

私の中学生の同級生に、Aちゃんという少し変わった女の子がいた。
Aちゃんは、クラスの女子の中で浮いていた。性格に問題があったからだ。
休み時間の間、みんなで輪になって話していると、Aちゃんがやってくる。
「・・・いま、なにしゃべってたの?私のこと?」
「違う」とみんなで言うのだが、「わかってるんだから、私の悪口を言っていたんでしょ」とAちゃんはまくしたてる。Aちゃんは自意識過剰で、被害妄想が強いのだ。
対人関係の不安はみんなが抱えていることだと思うが、Aちゃんは度が過ぎていた。
誰かが楽しそうにしていればAちゃんの悪口で盛り上がっているからだと考え、誰かがひそひそ話をしていれば全て自分の悪口だと思うのだ。
誰もそれほどAちゃんに害意を持っていなかったのだが、Aちゃんにそう伝えても、一向にAちゃんの妄想癖は治らなかった。
そのうちみんな相手するのに疲れてAちゃんを避けるようになり、それがまた悪循環を生んでいた。

それも、もう10年以上前の話だ。
同棲している彼と夕食後に話をしていたら、ふとAちゃんのことを思い出したので、話しをしたのだった。
「いたいた、男でも、そういうヤツ。たぶん、ビョーキなんだよ」と彼は言った。
その時、家の固定電話が鳴った。
こんな遅くに誰だろうと思いつつ、電話を取った。
「・・・今、私の悪口言ってたでしょ?」
電話の向こうから聞こえてきたのは、間違えようもなくAちゃんの声だった・・・。

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