第66話「千里眼」

2016/10/01

私の小学校の同級生にAちゃんという女の子がいた。
このAちゃんが、かなりの変わり者だった。
自分には、透視能力があるというのだ。
遠くにあるモノや人がイメージできるのだという。
いわゆる千里眼というのだろうか。
真顔で言うものだから、みんな困ってしまった。
担任の先生も、どう扱っていいものかわからないようだった。
でも、クラスメイトの失くし物の場所を的確に当てたことで、風向きが変わった。
Aちゃんには、本当にそういう力があるんだと、みんなもてはやすようになり、一躍人気ものになった。

すると、Aちゃんは、今度は未来が視えると言い出した。
あなたは何歳で結婚する、大人になったらどこどこで仕事をしている。
そういった予言をし始めた。まるで占い師だ。
もちろん遠い未来の話だから、誰にも確かめようがない。
でも、女子は基本的に占いが好きだから、わざわざ他のクラスからAちゃんに占いをしてもらいに来る子まで現れた。
ところが、ある日。
Aちゃんは、ある女の子に、「・・・何も見えない。あなたは、若くして死ぬと思う」と予言をした。
その子が、PTA会長の娘だったことから、大きな問題になって、Aちゃんはかなり先生から怒られたらしい。
でも、それからもAちゃんは不気味な予言をやめなかった。だんだん、みんなAちゃんを気味悪がるようになり、Aちゃんはクラスで浮き始めた。
やがて、Aちゃんは学校に来なくなった。
Aちゃんが自分の部屋で首を吊って、自殺したのは私が中学校2年生の時だった。

社会人になるまで、Aちゃんのことは忘れていた。
急に思い出したのは、Aちゃんが私に言っていた予言を思い出したからだ。 「xxちゃんは、25歳で結婚するけど、3年で離婚するよ」
言われた時は、ずいぶん腹が立ったが、28歳の誕生日を控える今、Aちゃんの予言は当たりかけていた。25歳で結婚したが、夫とはお互い仕事が忙しくすれ違いばかりで、離婚の危機に陥っていた。
Aちゃんに千里眼の力があったとは思っているわけではないが、意地でもAちゃんの予言通りになってたまるかという気持ちはあった。

そんなある日、自宅に持ち帰った仕事をパソコンでしていると、私は誰かに見られているような視線を感じた。夫は今日も飲み会のはずだから自宅には誰もいない。
首のうしろがちりちりとするような嫌な感覚がずっと収まらなかった。
その時、私は視線の正体に気がついた。
・・・背後から、私を見つめる目が、ディスプレイに映りこんでいたのだ。
その目は、間違いなくAちゃんの目だった。
ハッと振り返っても何もなく、再びディスプレイに視線を戻した時にはAちゃんの目はなくなっていた。
Aちゃんは、本当に未来を視ていたのかもしれない・・・。
ほどなくして、私は夫と離婚した。

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