第61話「同級生」

これは、この前、中学の同窓会に参加した時に体験した怖い話。
本当は行くつもりはなかったんだけど、今でも付き合いがあるクラスメイトのAに、一人で行きたくないからと頼まれて仕方なくいくことにした。
ほとんどの同級生が実に15年振りの再会だった。
会場であるホテルのホールには100名くらいが集まっていた。
初めは昔話が盛り上がって楽しかったけど、だんだんと話題が今の仕事や家庭の話にシフトしていって、社会的ステータスの比べ合いみたいになった。
やっぱり来なければよかったなと後悔し始めた時、ふとある同級生の顔が浮かんだ。
そういえば、あいつ来てるのかな・・・。
俺は会場をうろうろして、ある同級生を探した。
すると、そこへ誘ってきたAが合流した。
「誰、探してんの?」とA。
「Cってヤツ」
「誰それ?クラスは?」
「わかんない」
Cとはクラスこそ違うがトイレや廊下で会った時に軽く話す仲だった。
「そんなヤツいたっけ。俺たちの学年に」Aは首をかしげている。
Aは、みんなを集めてCを知っているか尋ねた。
すると、誰もCなんて人間は知らないという。
同じ学年であることは間違いがない。俺たちの中学校は学年ごとにジャージの色が決まっているからだ。
Cも確実に俺と同じ紺色のジャージを着ていたのを覚えている。
「誰も知らないなんてよっぽど影薄いヤツだな」Aが言うと、みんなは爆笑した。
なんだか自分が笑われているみたいで気分が悪かった。
ちょうど卒業アルバムを持ってきている人がいたので俺は意地になってCをアルバムから見つけてやろうとした。
けど、逆に俺が目を疑うハメになった。
どのクラスにもCなんて人間は存在しなかったのだ。
俺の記憶間違い?そんな馬鹿な話があるのか。
はっきりとしゃべった記憶があるのに・・・。
俺は混乱した。
C、お前、いったい何者なんだよ・・・。
その時、ちょうどカメラ撮影をしていたカメラマンが俺たちを写した後で、「うわっ」と声を上げた。
みんなで写真を確認して、全員が絶句した。
俺たちの背後に中学の制服を着た男の子が映っていたのだ。
暗がりでうつむいているのではっきりとは見えなかったが、Cだと俺にはわかった。
「嘘だろ」「なにこれ」とみんな怖がってしまい、ちょっとしたパニックが起きた。
だけど、俺は怖いというよりは、少し気分がよかった。
影が薄いなんて馬鹿にされたもんだから、ちょっと怖がらせてやろうと出てきてくれたような気がして。
「お前、呪われたかもな」
Aに言ってやったら、Aは心底、震え上がってた。
俺は、Cが映ったその心霊写真をもらって帰って、今でも大切に取っている。

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