【都市伝説】人食い冷蔵庫 #57

2018/05/30

 

「人食い冷蔵庫って知ってるか?」
大学の同級生のAのアパートで二人で飲んでいた時のこと。
深夜に、Aがとうとつにそんな話を始めた。

「ある男が、家に帰ってきて冷蔵庫を開けたら、空っぽだったんだよ。おかしいなと男は思った。だって前日、スーパーで惣菜やら飲み物やら色々買って入れておいたはずだったんだ。不思議に思って冷蔵庫の中を隅から隅まで見ていたら、いきなりバクッ!。ドアが閉まって男は冷蔵庫の中に引きずり込まれた。悲鳴を聞いた男の家族が開けた時には、もう男の姿はなかった。冷蔵庫に食べられて消化されてしまったんだ。いつも使っている冷蔵庫だからって安心するなよ。人食い冷蔵庫は、色んな冷蔵庫に化けて獲物を待っているからな」
「なにそれ?お前の創作?」
俺は笑って言った。設定がアメリカのB級ホラーみたいだ。
「実話・・・俺の兄貴、人食い冷蔵庫に食べられて死んだんだ」
Aはどうしても俺を怖がらせたかったらしい。身内までネタにし始めた。
「冗談にしても笑えねえよ」
「だったら、調べてみろよ。そこの冷蔵庫がそうだから」
Aはリビング横にある冷蔵庫を指差して淡々と言った。
そういえばAの家の冷蔵庫は一人暮らしにしては大きい。
さっき、コンビニで買ってきた酒を冷やすために入れておいたので、確実に中身はあるはずだ。
それにAがもともと買っていたパックのお肉やフルーツなんかも入っていたのを覚えている。
これで俺が開けて中身がなかったら・・・。想像すると少し怖くなった。Aの思う壺だ。
「わかった。俺の負け。けっこう怖かった」
俺は降参した。しかし、Aは表情を変えない。
「いいから開けてみろって」
まだ続けるつもりか。まあ、ちょうど新しい飲み物が欲しかったので俺はAに付き合うことにした。
立ち上がって冷蔵庫の扉を開けた。
目を疑った。冷蔵庫は空っぽだった。
Aの方を見ると、Aは申し訳なさそうな顔になっていた。
「悪いな。ときたまちゃんとした餌をあげないと機嫌が悪くなるんだよ」
獣のような唸り声がしたかと思うと、扉が勢いよく閉まり、俺は冷蔵庫に飲み込まれた・・・。

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