第35話「カフェの窓際」

2016/09/01

この前、体験した奇妙な話です。

俺は、毎朝、必ず出社前にカフェに寄って、コーヒーを飲みながら新聞を読んでいるんです。
毎日行くものだから、自然と座る席が決まってきて、俺の場合は、2階のカウンター席の一番端なんです。
席の前は、通りに面してガラス張りになっているんで、表通りが見渡せるのがお気に入りでした。

で、ある日のことです。
寝不足で頭が働かなかったので新聞を読むのはやめて、コーヒーをすすりながらボーっと表を見ていたんです。
すると、通勤通学の人たちの中に、赤いランドセルを背負って黄色い帽子を被った女の子の姿が見えました。
あれ?って思いました。
さっきも、あの子が通るのを見たような気がするんです。
その時は、ちょっと不思議に思った程度でした。
でも、またしばらくしたら、同じ女の子が、表通りを歩いてきたんです。
おっかしいなと思って、集中して表通りを見ていたら、3分間に10回以上、その子が表を歩いてったんですよ。
さすがに気持ちが悪くなりました。
だって、行ったり来たりとかじゃないんです。右から左へ、進行通行が同じなんですよ。
だいたい、こんな都心のビジネス街に小学校なんてないんです。考えればおかしいことだらけでした。
あの子、おかしい・・・。朝からヤバいもの見ちゃったかもしれないなと思ってたら、会社の後輩が歩いているのが見えました。
ゾッとしました。
さっきの女の子が、後輩のスーツに掴まって、ぴったり後ろにくっついて歩いていたんです。
そのまま、二人は会社の方向へ歩き去っていきました。
そうしたら、それきり女の子は表を通らなくなったんです。
あいつ、まさかヤバいのを会社に連れてっちまったんじゃないのか・・・。
俺は、そう不安になりました。

今のところ、その後輩が何か不幸に巻き込まれたとか、そういう話はありません。
でも、いるんですよ。いまだに、その女の子が後輩の背後に・・・。

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