【怖い話】休憩所のトイレで何かの気配を感じ・・・ #016

2017/09/27

 

中学時代の同級生4人で、温泉に行った帰りのことだ。

僕の運転で、峠道を下っていると、温泉上がりに水分をとりすぎたのか、僕は急にトイレに行きたくなり、
友人達に断りを入れて、山あいの休憩所に寄ることにした。
30台くらいの駐車場とトイレがあるだけの休憩所だった。
僕たちの他に車はなかった。
車を降りると、ひぐらしの鳴く声が聞こえた。
ひんやりとした空気が心地いい。
トイレは、いかにもといった感じの古さで、蜘蛛の巣がいたるとこにあり、
個室は全て和式で、地元のヤンキーがスプレーで書いたと思われる落書きがたくさんあった。
電球が一つあるだけなので中は薄暗くて、なんとも気味が悪かった。
僕は、早く用を済ませて車に戻ろうと思い、小便器の前に立ってジッパーを下ろした。

その時だった。
僕の他には誰もいないはずなのに、人の気配がした・・・。
辺りを見回すが、もちろん誰もいない。
手洗い場の蛇口から水がポツポツ落ちる音だけが聞こえる。
背後の個室の中に、誰かが立ってこちらをじっと見ているような、そんな気がした。
ふいに、悪寒が走った。
僕は用を済ませると、手も洗わず、車に駆け戻った。

すると、駐車したはずの場所に車がない。
友人たちが、僕を怖がらせようとして、タチの悪いイタズラを仕掛けているのだと思い、冗談抜きで腹が立った。
どうせ峠道を下ったところで笑いながら待っているのだろう。
そう思って、僕は小走りに道を下って行った。

その時、ドン!という鈍い音が響いた。
交通事故の時の音だ。
僕は全速力で音がした方へ走って行った。
僕たちの車がガードレールに衝突していた。
フロント部分は、完全にひしゃげている。
後部座席で友人の一人がぐったりとなっているのが見えた。頭から血を流している。
「大丈夫か!?」僕は呼びかけた。
友人がうっすらと目を開き、僕を見た。
途端に、「うわああああ」と大きな叫び声を上げた。

友人たちは全員、命に別条はなかった。
後から聞いた話だが、事故の時、車を運転していたのは僕だったらしい。
トイレから戻ってくるなり、僕は黙って車を発進させたという。
話しかけてもムスッと黙ったままで様子がおかしいと友人たちは思っていたらしい。
しばらく峠道を下っていくと、急に、僕が笑い出したという。
助手席に乗っていた友人によれば、口角が耳に届きそうなほど口が開き、目は焦点が合っていなかったという。
「僕」は車のスピードを上げた。友人たちが制止させようと呼びかけても、一切応じず、僕は笑い続けていたという。
そして、あの事故は起きた。
車を運転していた「僕」は、僕が駆け付けた時には、すでにいなかった。
あのトイレに潜んでいた何者かが僕になりすましたのだろうか。

後から知った話だが、あの休憩所のトイレは、地元では有名な心霊スポットなのだという。

-心霊スポット, 怖い話